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zoom RSS 【S】サンタさんにお願い(4)

<<   作成日時 : 2009/12/24 17:50   >>

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クリスマス・イブ。

ホワイトクリスマスとはいかず、あいにくの冷たい雨。

幼なじみの若い男女が、古ぼけた納屋の荷物をあさっています。

「おかしいわね。確かこの辺で見たんだけど。」

「本当にあるのか?願いを叶えるサンタ人形なんて。」

片っ端から箱を開けていく女性に、男性が話しかけます。

「子供の頃の話だからね。

祖母が仕事途中に出逢った子供にもらったと聞いたの。

サンタ人形の話は都市伝説があるし。」

「へー・・・。」

熱心に探す女性の背中を見つめ、男性は寒そうにコートの襟をかき寄せます。

(・・・見たいなんて言うんじゃなかったな・・・)

彼は後悔しています。

それは寒い納屋と言うことと、彼女がこんなにムキになるとは思わず、迂闊に疑った発言をしてしまったからです。

幼なじみの彼女は、言いだしたら後には引かないことを、身をもって知っているので敢えて言いません。

彼らは成人した今でも、時々こうして逢っているのです。

「まあ、願いには期限があって、しかも1回しかダメだって言うから、見つけてもお願いは出来ないと思うんだけど・・・。あ、あったわ!」

箱の中にあった、更に一回り小さな箱を開けて彼女が振り返りました。

「へぇ。これが噂の・・・。」

手にとって、男性はしげしげと眺めます。

「作りがいいね。工芸品みたいだ。安物の仕立てじゃないし、素地が・・・なんだろう?とても触り心地がいい。」

「さすが、プロの発言ね。」

「いや。プロと言っても、ぬいぐるみの設計しているだけだから・・・元の形から人形に出来るように設計するだけで・・・。」

もごもごと最後の方は掠れるような声になる男性。

彼のお仕事も、この不況下で大変なのです。

彼にはまだ自信が無く、キャリアもまだ浅く、先日も上司に怒られたばかりです。

「ああ愚痴らないで!わかってるから。給料下がっても仕事が有るだけマシとか聞き飽きたもの。」

「・・・カードが箱に入ったままだ。」

男性が見つけたカードを、女性がのぞき込みます。


『願いごと一つだけ かなえてあげましょう。

ただし 願えるのはクリスマスが終わるまで』



「へー。もらった時のクリスマスなら、とうに時効ね。」

「もし、これが有効なら、何を願うつもりだったんだい?」

「そうね・・・・・・・。」

彼女は言いませんでした。

しかし、唇が小さく動いたのを彼は見逃しませんでした。

(・・・パパ・・・欲しい)

パパ?彼女の父親は健在だ。彼は首を捻ります。

その時、サンタのお人形が微笑んだ気がしました。

「あ!」

彼女が突然うずくまります。

「どうした!?」

慌てて支えようとする彼を見もせずに彼女が悲鳴を上げます。

「おな・・・おなかが痛い!・・・」

救急車を呼ぼうかと逡巡してやめ、外に置いてある車で彼女を近くの病院まで運びました。

大騒動をした末、彼女の両親に連絡を取り、急遽入院となった彼女の病室へと彼は急ぎました。

病室には医師が難しい顔をして立っており、困ったような顔をして彼女が寝ています。

「寒い納屋に数時間も居たとはね。少しは考えなさい。」

医師は冷たく、彼に向かって言いました。

「は?」

「危うく流産ですよ。気をつけて下さい。」

それだけ言うと、病室に彼らを残して立ち去ってしまいました。

目が点になった彼を、気まずそうに彼女が見つめます。

「そー言うことなのよね・・・。」

「ちょ?え?だけど・・・えええ?!」

身に覚えがないとは言わないけれど、寝耳に水とはこのことです。

「何でそーいうことは、ちゃんと言わないんだよ!?」

精いっぱいの叫びを彼は吐き出します。

「だって。一人前になったら彼女作るとか言ってたじゃない。私の責任でもあるし。」

彼女は布団を顔の半分まで上げて、目だけでこちらを見ています。

(ああそうか。

僕がふがいないから。

いつまでもグジグジして、自信がない事ばかりアピールして。

いつだって、手を伸ばせば手に入るのに。

責任逃れをして。

彼女にハッパかけられては、前へ進んできた。)

彼は、ようやく彼女の、声にならない願いに気付きました。

(産まれてくる子のパパになって欲しい。)

彼女が握りしめて病院まで持ってきたサンタクロースの人形が机に置いてあります。

(そうか、今日はクリスマス・イブだったな。)

いつしか日は沈み、外はしんしんと雪が舞っています。


『願いごと一つだけ かなえてあげましょう。

ただし 願えるのはクリスマスが終わるまで』



画像



カードの言葉を思い出します。

(間に合って良かった・・・。)

窓から彼女に視線を移すと、不安げに見つめていた瞳が、布団の中に埋もれてしまいました。

「もうじきご君の両親が来るから。ちゃんと挨拶するよ。式は・・・来年でもいい?」

彼は優しく声をかけます。

驚いて顔を出した彼女の頬に、人形をくっつけます。

「都市伝説は、ホントだったね。」

彼は優しく彼女にキスをしたのでした。



MerryChristmas!









併せてどうぞ♪

【S】サンタさんにお願い(1)

【S】サンタさんにお願い(2)

【S】サンタさんにお願い(3)

【S】クリスマス チャイルド(1)


せめてクリスマスはみんな安らかでありますように。



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