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zoom RSS 【S】サンタさんにお願い2013『平穏な人生』

<<   作成日時 : 2013/12/25 00:39   >>

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空は灰色だけれど、まだ日が暮れる前なので、少し明るい。
窓から見える枯れ枝に、うっすらと雪が積もっている。
灰色の空に、白が良く映えていて、これはこれで美しいと感じる年齢になってしまった。
室内は、壁紙をはじめとして殆ど白で統一されているため、冷たい印象だけれど、
適度な暖房の利き具合がそれを忘れさせてくれる。

平穏無事に生きたと思う。
平凡すぎる人生。
つまらないと思う人もいるかもしれないが、私はこれで良かったと思う。
今は起き上がる事もままならないけれど、それでもこうして病院で過ごせるのだから、
幸せだと言えるだろう。


あの日。
数十年前のクリスマス。
今日のように、灰色の空から雪が舞っていた。
若くてまだ幸せの意味すら、よく理解出来てなかったあの頃の私は、
一人の子供と出会った。
やわらかい栗色の髪の少年。
街を歩いていた私の前にいきなり現れて、

「はい。」

と、小さな箱を手渡してくれた。
私はその時行われていたクリスマスイベントの景品配りをしている少年だと思ったので、
素直にその箱を受け取ってしまった。
あの頃、小さな子供がイベントの手伝いなどで小遣い稼ぎをする事は、この地方では珍しくなかったのだ。

手渡された箱にはカラフルな包装がしてあり、赤と緑のリボンが掛けられていた。
家に帰って開いたその箱の中には、ちいさなサンタクロースの人形が入っていた。
中に綺麗なカードが一枚。


画像


『願いごと一つだけ かなえてあげましょう。

ただし 願えるのはクリスマスが終わるまで』



正直私は、困ってしまいました。
私には、これと言った夢もなければ、困難もなかったから。
平凡で平穏で、無為な人生を送っていたのです。
自分には、がむしゃらに努力をしたり、夢を追って頑張る力はないと、初めから諦めていた。
そんな私に、願える事なんて無かったのです。
だから、臆病で勇気のない私に出来る、願い事をしました。

「本当に困って、何か願えるようになった時に、もう一度来て。」

「その願い、聞き届けましょう。」
サンタの人形から声がした気がしました。
そして、翌朝には全てが消えてしまっていました。
箱も、リボンも、サンタクロースの人形も。

その後知り合った男性と結婚をし、二人の子供に恵まれました。
子供はとっくに自立をして、家庭を持ち、孫もいます。
少し前に、夫は天へと旅立ちました。
悲しかったけれど、それもまた人生だと受け入れました。
あれから、サンタクロースのお人形は現れていません。

平凡で、平穏で、無為で、退屈な一生。
これが私の望んだ全てだから、これでいいのです。

「じゃあ、願いが叶ったんじゃないかな。」

どこからともなく現れた子供が、ベッドの側に立っています。
この病院へお見舞いにでも来た子供かしら?
でも、親御さんの姿が見えないわね。
一人でこんな所に来たら、ダメだと教えてあげたいけれど、もう声も出ません。

「ぼくのこと、覚えてないの?」

顔をのぞき込んだ子供は、クリスマスの日に箱をくれた子供にそっくりです。
でも、あれからかなりの年月が流れているのに。

「ぼくたちは、年を取らないからね。」

そう言って、にこにこと笑っています。
私は混乱してしまいました。
そろそろ、お迎えが来るのかもしれないと、覚悟をしました。
そうでなければ、この様な事態は理解が出来ません。
この少年は、私の脳が勝手に作り出した幻覚に違いないのです。

「そもそも、願い事は一回だけ。
もう一回現れて、願いを聞くなんて出来ないんだ。
だから、サンタ人形は、もう一回来なくてもいいように、
本当に困る日が来ない人生をプレゼントしたんだよ。」

平凡で、平穏で、無為で、退屈な一生。
それは、私にプレゼントされた、人生だったのだ。
普通の人にあるであろう、些細なトラブルさえ、私には無かった。
つまりは、そう言うことなのだ。

その時、バタバタと別の足音がして、病室の扉が派手な音を立てて開きました。

「ちょーっと!!あんたの担当は、隣の病室でしょ!
なに間違ってるのよ!!」

現れた女の子は、ズカズカ近寄ってくると、
勢いよく少年のコートのフードを掴んで、病室の外へと引きずっていきます。
少年は何か言っていますが、まったく聞き入れてもらえてないようです。

「急に来て、失礼しました!」

部屋を出る時に、そう言って少女は一礼をしたようでした。
廊下の外でも何か言い合っているようで、その様子はとても微笑ましく感じました。

神様。
あと少ししかない人生ですが、幸せでした。
大きなトラブルも、小さなもめ事もなく、一生を過ごせました。
あの、サンタクロースのお人形を遣わせてくださって、ありがとうございます。
感謝の言葉しか、見つかりません。

世の中には、とても辛い目に遭っている人や、苦しんでいる人がたくさんいるのは知っています。
平穏で平凡な人生しか歩んでこなかった私には、想像もつかない世界です。
わたしは、この人生で良かったと、心から思います。
でもやっぱり、最後に少しだけでも、何かをしたくなりました。

今夜はクリスマス。
家族が、この病室に集まることになっています。
残り少ない時間を使って、出来ることを全てやってしまいましょう。
わずかな蓄えしか有りませんが、私が旅立った後、然るべき場所へ寄付をしましょうか。
人生で得てきた人脈を使って、人道的支援をしましょうか。

人は、自分が幸せでないと、他人を幸せにすることが難しいと思います。
だから、幸せなわたしが出来ることを、今から全てやりたいのです。
家族はきっと、協力してくれることでしょう。
私と同じでなくていい。
自分を。
自分の一生を幸せだと感じられる人々を、増やしていきたい。

そうです。
私は今、初めて夢を持ったのです。

春まで私の命は続かないでしょう。
今。
今から、出来るだけのことをしていくのです。
明日の朝、旅立ったとしても、後悔が残らないように。
精一杯のことをしていきましょう。
たくさんの人々が、笑い合って言えるように。


MerryChristmas!





↓併せてどうぞ♪

【S】サンタさんにお願い(1)

【S】サンタさんにお願い(2)

【S】サンタさんにお願い(3)

【S】サンタさんにお願い(4)

【S】サンタさんにお願い2010『サンタ人形』

【S】サンタさんにお願い2011『クリスマスの涙』

【S】サンタさんにお願い2012『restart』

【S】クリスマス チャイルド(1)



クリスマスは、みんなが安らかでありますように。



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【S】サンタさんにお願い2015『We wish』
クリスマス・イブの夜。 棚の上にちょこんと置かれたサンタのお人形。 他のお人形達とひしめき合って、少々窮屈なポジションに座らされています。 お人形ですから、表情を変えることは出来ませんが、 密かに困っていたりします。 ...続きを見る
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