【S】サンタさんにお願い(2)

とても忙しい男性がいました。

本人が望んだわけではなく、たまたまそういう仕事に就いてしまっただけでした。

だから、周りに追いつこうと、一生懸命に働きすぎて、

この世に楽しいことがあると言うことも、忘れてしまっていました。

クリスマス・イヴの夜。

降りしきる雪の中。

足早に歩く歩道の上、自分だけが一人きりなのだと、

辺りを見回して、ようやく気付きました。

それまでは、辺りを見回す余裕もなかったからです。

彼はとても疲れていたのですが、クリスマス一色の街中は、

彼のこころまで、疲れさせてしまいました。

すれ違った若い男女をながめて、ため息を一つ。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん♪」


くいくいと、コートの袖を引っ張られて。

見るとそこには小さな男の子が、にこにこしています。

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「はい。これあげる。」

渡されたのは、ちいさめの箱。

「メリー・クリスマス♪」



「あ、ちょっと!」

男の子は、スキップ踏んで、雑踏に見えなくなってしまいました。

困った彼は、とりあえずその箱を持って帰りました。

「こんなものを渡されてもなぁ?」

家に帰り、途中で買わされたショートケーキを頬ばって。

綺麗に赤いリボンのかかった箱をながめます。

「まあ、いいかな。」

眠気よりも好奇心。彼はその箱を開けてみることにしました。

出てきたのは、サンタクロースのお人形ひとつ。

お人形にはカードが添えられていました。


『願いごと一つだけ かなえてあげましょう。

ただし 願えるのはクリスマスが終わるまで』



「何なんだ。」

彼は人形を見つめます。

でも、気を取り直し、サンタクロースに向かって、願いました。

「サンタクロース。俺をいい男にしてくれ。

モテるようになって、素敵な女性と巡り合わせてくれよ。」

すると、どうでしょう。

いきなりお人形から声がしました。

『願いごとは一つだけだよ。いい男になるか、モテるようになるか、

素敵な女性と巡り合うか。どれにするんだい?』

驚いた彼は、あんぐり口をあけたまま。

『早くしておくれ。次があるんだよ。』

サンタクロースが急かします。

でも腰は抜けた様になっているし、咽はカラカラだし。

彼はそれでも考えました。

いい男なら、いい女性とも出逢えるかもしれない。

モテるだけで、浅い付き合いしか出来ない男にはなりたくない。

素敵な女性と巡り会っても、

付き合えるかどうか、付き合いが続くかどうかわからない。

「なら、いい男にしてくれよ。」

出来るものならやってみろ。そんな感じで。

彼は願いごとを告げました。

サンタクロースのお人形は、ちょっと微笑んで、それきりなにも言わなくなりました。

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翌朝。

人形を机の上に放ったまま、何事もなかったかのように仕事に出た彼。

ですが、なんだか今日は雰囲気が違います。

上司が言います。

「何かいいことでも、あったのか?」

それ程に、彼の印象は変わっていました。

切羽詰まった様な辛い顔は、余裕のある表情に。

眉間のしわや目つきの悪さは、かき消えて。

暫くの後、彼は周りも認める、“いい男”になっていきました。

サンタクロースは、ちゃんと願いを叶えてくれたのでした。

その後、たくさんの女性と巡り会い。

何度かの素敵な恋をして。

生き方の変わった彼は思うのです。

自分の選択は間違っていなかったと。

でも、運命の相手に巡り会うのはいつなんだろう?

早く、巡り会いたいものだと、心待ちにして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

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